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箆柄暦『九月の沖縄』2011 大城美佐子&堀内加奈子

2011.09.01
  • インタビュー
箆柄暦『九月の沖縄』2011 大城美佐子&堀内加奈子

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箆柄暦『九月の沖縄』
2011年8月31日発行/101号

 

 

《Piratsuka Special》
大城美佐子 & 堀内加奈子
沖縄民謡がつなぐ、師匠と弟子の深い縁。

 芸歴五十年を超える沖縄民謡の大ベテランであり、「島唄の神様」と呼ばれた故・嘉手苅林昌の相方としても知られる女性唄者・大城美佐子と、北海道出身ながら大城のもとで十年以上修行を積み、いまや民謡界のホープの一人と目される若手唄者、堀内加奈子。これまで数々のステージで共演し、息の合った歌三線を披露してきた師匠と愛弟子が、この秋、ついに連名でジョイントアルバムをリリースする。タイトルは『歌ぬ縁』。大城と堀内が得意とする沖縄民謡のスタンダードナンバーに、二人をモチーフとして書き下ろされた新曲二曲を加えた意欲作で、タイトル通り“歌がつなぐ師弟の縁”をしみじみと感じさせる内容となっている。「美佐子先生とアルバムを作るのが夢だった」という堀内は、今作の録音を通して、改めて師匠の歌の魅力に惚れ込んだという。

「先生の歌がすごいと思ったのは、なんといっても新曲です。先生は最初“新曲を歌うのはすごく久しぶりだし、覚えられるかしら”って不安そうだったのに、いざ歌い始めたらとても素晴らしくて。さすがプロ!って感動しました」

 それに対し大城は「だてに五十年やってないよ」と笑いながら、「彼女の歌った『下千鳥』も、とっても感動しましたよ」と語ってくれた。「あの歌は沖縄の人でもなかなかうまく歌えないんだけど、今回の曲の中でも一番良かった。他の曲も、昔に比べると声も良くなったし声量もあるし、何より私の歌をよく聞いて勉強している。民謡で一番大事なのは、歌に対する姿勢、心の持ち方なんです。彼女は姿勢がいいし、一生懸命だから、もっといい唄者になると思いますよ」

 そもそも十一年前、堀内から弟子入りを志願された大城は、「習いたかったら習えばいい」と即決、自身の店「島思い」の舞台で修行を積ませたという。「民謡を次の世代につなげていくことが私の使命」と考えている大城にとって、重要なのは出身地ではなく、民謡への思いの強さだったのだろう。その期待に応えて堀内は貪欲に民謡を学び、めきめき成長していった。途中、周囲から「ヤマトンチューに民謡は無理だ」と言われて落ち込んだこともあるが、そのときも大城が「あんたなら絶対できる」と励ましてくれたという。

 堀内は「そうして壁を乗り越えるうち、民謡への思いはどんどん深くなっていった。今はずっと民謡を歌い続けたい、歌を通じて人とのつながりをもっと深めたいと思っています」と語る。そこには「地球がある限り、島唄も続いてほしい」という、大城の願いに応えようとする気持ちもあるのだろう。

 本作の最後に収録された新曲「歌ぬ縁節」は、「語るぐとぅ歌てぃ、継じゃい行かや、島唄や島情」と結ばれている。「絹糸声」とも称されるしなやかな師匠の歌声と、ハツラツとした中にも情けのにじむ弟子の歌声。沖縄民謡を愛し、歌い継ごうとする二人の心意気が伝わる熱唱に、ぜひ耳を傾けていただきたい。
(取材・文/高橋久未子)

 
大城美佐子(おおしろ・みさこ、写真左) 1936年大阪市大正区生まれ。名護市辺野古で育つ。知名定繁に師事して民謡を学び、ソロ活動のほか故・嘉手苅林昌の相方も務めた。現在は那覇に自身の店「島思い」を構え、演奏活動や後進の指導に取り組んでいる。

堀内加奈子(ほりうち・かなこ、写真右) 北海道出身。東京で働いているとき沖縄民謡に出会ってその魅力に惚れ込み、沖縄に移住。2000年に大城美佐子に弟子入りし、「島思い」で働きながら民謡を学ぶ。現在は大城のサポートに加え、ソロの唄者としても活躍中。

◆大城美佐子&堀内加奈子
『歌ぬ縁』

リスペクトレコード RES-194 
2,520円 2011/9/21発売
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