箆柄暦『十一月の沖縄』

箆柄暦『十一月の沖縄』2012
2012年10月31日発行/115号

《Piratsuka Special》
りんけんバンド
『黄金三星』

《Piratsuka Topics》
オリジンお笑いライブ200回記念 東京&沖縄
普天間かおり『Smile Again』
紫『琉神マブヤー1972レジェンド』
安富祖貴子『マイ ブルース』
上間綾乃『唄者』発売ツアー第二弾
BEGIN『トロピカルフーズ』
知花竜海『新しい世界』

 
 
 

Piratsuka Special
りんけんバンド
世界に通用する沖縄の音楽を作る。

 三線など沖縄の伝統楽器と洋楽器を融合させたバンドサウンドに、沖縄のメロディや方言歌詞を組み合わせた「沖縄ポップ」というスタイルで、日本の音楽シーンに新たな一ジャンルを切り開いた「りんけんバンド」。一九九〇年の全国デビュー以降、リーダーの照屋林賢が生み出す親しみやすい楽曲と、歌姫・上原知子の凛として気品ある歌声、そして男性ボーカル陣による勇壮なパフォーマンスで人気を博し、長年沖縄音楽界を代表するグループとして活躍し続けてきた。

 そんな彼らがこの十一月、オリジナルとしては通算十四枚目、前作からは実に九年ぶりとなるニューアルバム『黄金三星』をリリースした。久々の新作は、いつもながらの明るくポップな音が華やかに弾ける一方で、その空気感は従来のゆったりしたテンションとは少し異なり、ベースやドラムのグルーヴィなノリが印象に残る、躍動感あふれる仕上がりになっている。その変化を林賢は「僕らが次のステップに進もうとした結果」だと語る。

「僕は、りんけんバンドの役割を“世界に通用する沖縄音楽のスタンダードを作ること”だと思ってるんです。その理想に到達するまでは解散できないんだけど、一方で『りんけんバンドは十五枚アルバムを出したら終わり』と、結成当初から決めてもいて(笑)。つまり残りはあと一枚なんですが、そこに向かうためのステップとして、このアルバムはすごく良かったなと。というのも今回、録音する中で『フレーズの作り方やリズムのタイミングをこう変えれば、より自分たちが目指す音楽に近づける』という希望のようなものが見えてきたんです。きっと将来はもっと自信を持って、“完成形のりんけんバンド”を届けられるんじゃないかと思います」

 そうしてバンドをプロデュースする一方、自分たちを取り巻く沖縄音楽業界全体の環境改善も必須だと、林賢は考えている。
「最近は沖縄の音楽業界も“売れる流行歌しか出さない”という本土的な考え方が主流になってきて、祖先から受け継いだ“根っこの音”に対する自信や誇りをどんどん失いつつあります。僕らはもっと自分たちの足下にある文化を大事にして、地元の音楽家がきちんと生活できる環境を作らなければならない。僕はいま六三歳なので、体力的にはあと三〜四年ですが(笑)、引退までの間に、音楽ビジネスの基盤だけは何としても整備したいですね」

 そう語る林賢の口調は実にパワフルで、まだまだ当分現役続行は間違いなさそうだ。結成三〇年を超えてさらに進化し続けるりんけんバンドと、林賢自身の今後の活躍が楽しみである。

(取材&文・高橋久未子/写真・喜瀬守昭)

 
りんけんバンド リーダーの照屋林賢(写真左から3人目)が1977年に結成。85年、オリオンビールのCMに「ありがとう」が採用され沖縄県内で注目を集める。1990年にアルバム『ありがとう』で全国デビュー。現在は北谷のライブレストラン「カラハーイ」を拠点に、全国各地でもコンサートを行っている。

◆りんけんバンド『黄金三星』
Rinken Records(TEL:098-982-7272)
Rinken-2044 2,800円 11/1発売
あけず羽ぬ花/黄金三星/ハラユイ サーユイ/時間愛さ/魚売アン小/天ぬ綾/ウシクガジマル/旅ぬ蜻蛉/やがてぃ七月/遊び出来らさ/とぅん返りば