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2018年11月19日 月曜日

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[ラキタ]インタビュー


PiratsukaSpecial 2011/12
ラキタ

アーティストの中には、生まれこそ沖縄ではないが、何らかのきっかけで“沖縄”と出会い、それが以降の音楽人生に大きく影響している、という人は少なくない。今年二一歳の若きロック青年・ラキタも、ある意味その一人といえるだろう。彼は五歳のとき、両親とともに家財道具一式を積み込んだワゴン車に乗り、湘南から沖縄に移住してきた。彼をこの地に連れてきた父の名は、どんと。九〇年代前半に日本のロックシーンを席捲したバンド「ボ・ガンボス」のボーカルであり、九五年のバンド解散後は沖縄を拠点に活躍した、カリスマ的アーティストである。

どんとは沖縄という新天地でソロ活動に取り組むも、二〇〇〇年、三七歳のとき旅行先のハワイで急逝。ラキタは母(元ZELDAの小嶋さちほ)や弟とともに、父亡き後も彼の愛した沖縄で生活を営んだ。そして、父のCD棚からチャック・ベリーのヒット曲「ジョニー・B・グッド」を見つけ出し、そのカッコよさに衝撃を受け、父の残したギターを手にして、ぽろぽろと弾き始めた。それが小六のときだったという。ラキタは「自分では、沖縄からどんな影響を受けたかわからないけど」と前置きしつつ、「五歳からずっと首里育ちだから、ふるさとは沖縄、僕はウチナーンチュです。沖縄に帰ってくるとやっぱり落ち着くし、音楽的な面での影響も大きいと思う」と振り返る。

そうやって沖縄でギターの腕と感性を磨いたラキタが、本格的に音楽活動を始めたのは二〇〇八年、首里高校を卒業して上京した後のことだ。東京に住む友人らとともに、メンバー全員十代のファンクバンド「ズットズレテルズ」を結成し、ギターを担当。各方面から高い評価を受けるもバンドは翌年解散、その後はソロとして県内外でライブを重ねてきた。そしていよいよ今月、初のアルバム『フライングロック』をリリースする。「これはいま録らないといけない、と思った」と言う彼にとって、本作は出発点であり、また同時に転換点でもある。

「僕はこれまで、ただ自分の好きに音楽をやってきたけど、最近は歌とリズムにも興味が出てきて、もっと練習したい、修行したいと思うようになりました。ただ、その新しい段階に進む前に一区切り、というか、これまでの作品をまとめておきたいと思ったんです」

完成したアルバムには、うねるようなロックサウンドの「船出の唄」、実験的なギター奏法が印象的な「最愛」、ライブでもおなじみの切ない曲「とうめいにんげん」、そして軽やかなリズムに乗せて生命のつながりを歌う表題曲「フライングロック」など、いずれもデビュー盤とは思えぬ完成度を見せながら、それでいて初々しさも失っていない、十曲が収録されている。サウンド面だけでいうなら、本作に沖縄的な要素はない。だが、仮に彼がずっと東京で育っていたとしたら、果たしてこれほどのびのびとした、スケールの大きなアルバムを生み出せただろうか。そして、どんとを知る人が本作を聞けば、歌詞の随所から、今はここにいない「お父さん」への思いを感じることが出来るはずだ。

沖縄を愛する両親の下、沖縄で育まれたあたらしいロックの種は、これから日本の音楽シーンでどのような成長を見せてくれるのだろうか。これからが楽しみなアーティストの登場である。

(取材・萩野一政/文・編集部/写真・喜瀬守昭)

Profile
ラキタ http://www.rakita.jp/
1990年NY生まれ。父はボ・ガンボスのどんと、母はZELDAの小嶋さちほ。5歳で両親と共に湘南から沖縄へ移住。小学校6年生からギターを始め、高校卒業後に上京して本格的に音楽活動を開始。現在は東京と沖縄を行き来しながらライブ活動を行っている。

ラキタ『フライングロック』
タフビーツ(t03-5773-9838)
UBCA-1025 2,500円 12/7発売
船出の唄/今夜の幻/最愛/Am/ふりむけば/とうめいにんげん/星のゆりかご/地獄チャンネル/フライングロック/あたたかいほうへ