箆柄暦『十一月の沖縄』175


箆柄暦『十一月の沖縄』2017
2017年11月1日発行/175号

アイヌと沖縄の文化交流イベント「チャランケ祭」
12月、恒例・桜坂劇場の年末ライブシリーズ
玉城まさゆき『WAKE UP!』
琉球古典芸能公演「琉球古典 たまゆらの世界」京都
「Sakurazaka ASYLUM 2018」2月開催
『琉神マブヤー〜ARISE〜10周年ベスト・アルバム』
「おきなわ新喜劇ツアー」1月に沖縄で実施
新垣睦美を聴く会
[早耳]年末、新良幸人・下地イサム情報

 

 

 

 

 

《Piratsuka Special》
登川誠仁『せい小やいびーん コザ・てるりん祭ライブ』

島唄界の最高峰、誠小のラストライブが甦る!

 沖縄島唄界の最高峰として長年にわたり活躍し、沖縄県民はもとより県外の沖縄ファンにも〝誠小(せいぐゎ)〟の愛称で親しまれた唄者、登川誠仁。2013年に病没して4年半あまり、もはや新作を聴ける機会はないものと思っていたが、なんとこのたび、生前に録音された実質的ラストライブの名曲集が、新たにリリースされることが決定した。

 アルバムタイトルは『せい小やいびーん コザ・てるりん祭ライブ』。「コザ・てるりん祭」は、コザ(現在の沖縄市)で毎年四月に開催されている島唄の野外ライブで、「てるりん」は戦後の沖縄芸能界を牽引したマルチエンターテイナー、照屋林助(2005年没)の愛称である。てるりんを筆頭に、沖縄芸能の発展に貢献した諸先輩方を追善するべく、2009年から始まったこのイベントは、入場無料ということもあって人気が高く、毎年県内外から多数の観客が詰めかける。出演側も手弁当であるにもかかわらず、我も我もと多くの唄者が駆けつけ、普段あまり顔を合わせない者同士が共演したり、楽屋で言葉を交わしたりといった光景も珍しくない。そんな機会を得て沖縄芸能界のベテランから若手へと、目には見えない〝大事なもの〟が脈々と受け継がれていく、この祭りはそんな交流の場にもなっているように思う。

 そしてこの雰囲気を作った人こそ、初回から第3回までのコザ・てるりん祭に出演し、後輩唄者達の先頭に立ってきた誠小だったのではないだろうか。晩年の彼は「唄はもちろん、芸の世界のあれこれを若い人に伝えたい」と語っており、てるりん祭でも常に愛弟子の仲宗根創(当時20代前半)と共にステージに立っていた。仲宗根は幼少から誠小に憧れ、高校時代に直弟子となっただけあって、その唄三線はまさに師匠譲り。アルバム1曲目に収録されている「鳩間節」から、驚くほど師匠と同じ節回し、息づかいで歌う。いわば〝正調登川流〟の仲宗根に対し、だんだんとノってくる誠小はあれこれと小技を繰り出し、それをまた仲宗根が受け止めて返す。

 途中で誠小が歌詞を忘れると、仲宗根が小さな声で歌詞を教える。よし!とばかりに勢いに乗って歌い上げる誠小。丁々発止とはまさにこのこと。同じステージで共に歌い、〝感じる〟ことでしか受け継ぐことができないものが、二人の間を流れていく。そこに客席からの拍手や歓声、指笛が飛ぶ。まるでコザ・てるりん祭の客席にいるかのような、臨場感あふれる46分。何度繰り返し聴いても楽しめる、島唄ライブアルバムの傑作といえよう。

 来年のコザ・てるりん祭は4月15日(日)、沖縄市の中央パークアベニューで開催される。通算10回目となる祭りのようすは、誠小やてるりんもグソー(あの世)から笑って見守っていることだろう。当日は会場で彼らを偲びつつ、現役世代の唄者達による素晴らしいステージを、たっぷり堪能していただければと思う。
(文・編集部/写真・萩野一政)

 

登川誠仁(のぼりかわ・せいじん)
1932年(昭和7年)生まれ。7歳から三線を始め、16歳で沖縄芝居の人気劇団「松劇団」に入団、地謡の見習いとして修行を積む。その後も多数の一流劇団で地謡を務め、20代半ばには沖縄民謡界の人気スターに。1999年、沖縄を舞台にした映画『ナビィの恋』に準主役として出演、全国的にも知名度を得た。2013年3月逝去。


登川誠仁
『せい小やいびーん コザ・てるりん祭ライブ』

DISC AKABANA/TERURIN RECORDS(TEL03-5660-6498)TR-001
2017/11/13発売 2,500円(税別)
鳩間節〜中作田/ナークニー〜山原汀間当/ゆんたく/新夢の沖縄島/ナークニー〜はんた原/石川かぞえ歌/ゆんたく/やちゃー小〜かいさーれー/とぅばらーま〜六調節