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箆柄暦『十月の沖縄』2017 ドキュメンタリー映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』

2017.10.01
  • インタビュー
箆柄暦『十月の沖縄』2017 ドキュメンタリー映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』


箆柄暦『十月の沖縄』2017
2017年10月1日発行/174号

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《Piratsuka Special》
ドキュメンタリー映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』
監督:佐古忠彦

『不屈』の男の軌跡から、沖縄の戦後史が見えてくる。

この夏、那覇市内の映画館・桜坂劇場で、一本の映画が全国に先駆けて公開された。タイトルは、『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』。第二次世界大戦後、米軍の支配下に置かれた沖縄で米軍の圧政と戦い、祖国復帰に向けて民衆の先頭に立った政治家〝カメジロー〟こと、瀬長亀次郎の生涯を追った長編ドキュメンタリー映画である。公開初日は劇場の前に長蛇の列ができ、公開後37日で観客動員数は1万人を突破。同劇場で上映したドキュメンタリー作品では異例の大ヒットとなっただけでなく、続く東京上映も初日から10回連続で満席となるなど、全国的にも大きな注目を集めている。

監督は、長年TBSテレビで報道番組のキャスターやプロデューサーを務め、沖縄での取材経験も豊富な佐古忠彦。佐古は約20年におよぶ沖縄取材の中で、「本土では沖縄の戦後史が知られていない」と感じており、それを何とか伝えたいと2年前、テレビ番組として瀬長亀次郎のドキュメンタリー制作を思い立ったという。

「本土では、沖縄の人達がなぜずっと『基地反対』の声を上げ続けているのか、よくわからないという人が多い。それは沖縄が戦後どういう状況にあったのかが、本土にはまったく伝わっていないからです。終戦後、本土は平和憲法のもとで復興が進んだのに対して、沖縄は1972年の本土復帰まで米軍の占領下に置かれ、日本国憲法は適用されず、インフラや労働環境の整備も進まず、土地は強制接収されて基地になりました。その基地は復帰後も引き継がれて、今も沖縄に全国の米軍専用施設面積の約7割が集中するという状態が続いています。そんな中でただ一人、占領軍の弾圧に抵抗して平和な社会を目指し、沖縄の祖国復帰に向けて戦い続けた政治家が、瀬長亀次郎さんでした。彼が演説会を開くと毎回何万人もの人が集まり、その演説に熱狂したといいます。沖縄では今も(基地問題などに対して県民の意思を示すための)県民大会や集会がよく開かれますが、その光景を見て、この原点はカメジローさんの演説会にあったんじゃないかと思ったんです。『不屈』の精神で戦い続けた彼の生き様を伝えることで、今の沖縄が置かれている状況や沖縄の人達の思いについて、本土での認識や理解が少しでも進めばと思いました」

佐古の思いは通じ、昨年夏に放送された番組は深夜かつ関東圏のみのオンエアだったにもかかわらず、非常に大きな反響があったという。佐古は「これだけ伝わるのなら、もっと多くの人に見てもらいたい」と映画化を決意。追加取材と再編集を経て、この夏の公開にこぎ着けた。映画化にあたっては、ベテラン俳優の大杉漣が語りで参加したほか、映画の趣旨に賛同した坂本龍一がオリジナル曲を提供。カメジロー本人の日記やインタビュー、遺族や関係者のコメント、当時の貴重な映像資料などもふんだんに盛り込み、彼の功績と魅力あふれる人物像、そして戦後の沖縄が辿ってきた歴史を丁寧に描き出した。本人を直接知る世代には懐かしく、知らない人々には新鮮な驚きと興味をもって受け止められる作品となっている。

現在、本作は全国各地でも次々に上映が始まっている。沖縄に住む人や沖縄が好きな人はもちろん、沖縄にあまり関心がない人にもぜひ、見てもらいたい一本だ。鑑賞後は、カメジローの時代から地続きにある今、さらにはこの先の未来において、沖縄は、そして日本はどうあるべきなのか、それぞれに考えを致してもらえればと思う。
(取材&文・高橋久未子)

取材協力:桜坂劇場

瀬長亀次郞(せなが・かめじろう)
1907年生まれ。新聞記者を経て、戦後は沖縄人民党結成に参加。52年、琉球政府の立法院議員選挙に当選。56年に那覇市長となるも、彼の人気と活躍を恐れた米軍の布令により、11ヶ月で市長の座から追放される。66年に被選挙権を回復し、70〜90年は衆議院議員として活動。2001年に94歳で逝去。2013年、那覇市内に資料館「不屈館」開館。

佐古忠彦(さこ・ただひこ)
本作監督。1988年TBSテレビ入社。1996〜2006年「筑紫哲也NEWS23」キャスター。現在は報道局で、多数のドキュメンタリー作品の制作を手がけている。

Information

◆ドキュメンタリー映画『米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー』
http://www.kamejiro.ayapro.ne.jp/
沖縄・桜坂劇場(那覇)他、全国各地の映画館で上映(詳細はWebサイト参照)