箆柄暦『九月の沖縄』2017


箆柄暦『九月の沖縄』2017
2017年9月1日発行/173号

久高幸枝『写真集 闘牛女子。2』
coba主催 洞窟コンサート『マブイオト』ゲストにMay J.
石川真生「大琉球写真絵巻 Part1〜4」
ローリーロール・バンド『R.R.Q.』
Okinawa Americana『OKINAWA AMERICANA』
element of the moment『OKINAWAN NIGHTS』
大城バネサ「今帰仁(なきじん)の春」
Soluna『日進月歩』
早耳 テオ・ヤンセン展覧会 in 沖縄

 

 

 

 

 

《Piratsuka Special》
山城知佳子

沖縄の人々の物語を、映像で紡ぐ。

 山城知佳子は、沖縄を拠点に活動する現代アートの美術家・映像作家である。制作しているのは、映像と音声を使ったアート作品。もともとは画家志望だったが、沖縄県立芸大大学院在学中に留学したイギリスで、表現者のパフォーマンスを映像で記録する「ビデオアート」と出会い、「私がやりたかったのはこれだ」と直感。帰沖後、2004年に初作品『OKINAWA墓庭クラブ』を制作した。沖縄特有の大きな墓の前で、真っ白なテニスウェアを着た彼女が、ポップな音楽に合わせてただただひたすら、延々と踊る。生者と死者が隣り合わせに共存する、沖縄の死生観を背景にした約六分のモノクロ作品は話題を呼び、山城の初期の代表作となった。

 その後2008年には、東京国立近代美術館のグループ展で『アーサ女』を発表。山城扮する〝アーサ女〟が、アーサ(海藻のアオサ)と共に沖縄本島近海の埋立予定地をゆらゆら漂い、島を見つめるという作品で、この頃まで主演は常に本人だった。しかし、2009年の『あなたの声は私の喉を通った』をきっかけに、山城の映像表現は大きく変化する。この作品で彼女は、70代の男性が戦争体験を語る音声と、その言葉をなぞって口を動かす自身の顔を重ね合わせ、男性の記憶を共有しようと試みた。

 そのとき「彼の声が自分の喉を通り、お腹の中に落ちていく」というイメージを持ったという。「いわば、彼の物語が私の身体に入り込んで、自分自身の物語になってしまったんです」。そのストーリーを「語りたい」と思った彼女は、それまでの「自身のパフォーマンスの記録」という手法から離れ、映像作家として「ストーリー性のあるフィクションの映像作品」に挑戦し始める。制作を重ねる中で、アートとは対極にある商業映画からも脚本や演出のノウハウを学び、作品に落とし込んでいった。

 そうして生まれた近年の代表作が、2012年発表の『肉屋の女』、そして昨年、国内最大級の現代アート展「あいちトリエンナーレ2016」で上映された『土の人』だ。特に『土の人』は、画面の色の美しさ、スピーディな展開、音の質感など、表現のクオリティも格段に高まった印象を受けた。三面のスクリーンに映し出される映像は、共に米軍基地のある沖縄と済州島で撮られたものだが、作品中で舞台は抽象化され、架空の地で土にまみれた〝土の人〟が、力強く生きる姿が寓話的に描かれる。まるで短編映画のようでありながら、映画とはまったく違うインパクトを持つ作品。それはアートなのか、映画なのか。そう問うと、山城は「自分のベースはあくまでもアート」と答えた。

 「現代アートの役割は、古い価値観を壊して目に見えない美を見い出し、それを想像力で形にして、現代に生きる人に必要な美意識を提示することだと思うんです。私はアーティストだから、アートでしかできないことはアートで表現したい。でも、物語をもっと詳細に伝えるためには、映画の手法が適しているとも思っていて。私は沖縄で生まれ育っているので、ここで日々生きて、感じていることを映像で表現したいんです。沖縄には(基地問題も含め)いろいろな現状があるけれど、その現実を抽象度の高いフィクション映像にして、沖縄の物語を紡いでいけば、その作品は世界にも必ず通じると思う。今後もアートと映画、両方のジャンルを越境しながら、自分にしか作れない芸術作品を生み出していきたいです」

 近年は国内でのアワード入選や映画祭参加のみならず、海外の美術館でも作品が購入・展示されるなど、世界的に高い評価を得ている山城知佳子。ぜひ機会を作って何処かの展示会場に出向き、彼女が沖縄で紡いだ、沖縄の人々の物語を見つめていただければと思う。
(取材&文・編集部/撮影・喜瀬守昭)

取材協力:RENEMIA


 

山城知佳子(やましろ・ちかこ)
1976年沖縄生まれ。沖縄県立芸術大学大学院環境造形学科絵画専修修了。2004年より県内外や海外の個展・グループ展で作品を発表。
公式サイト http://suijonohito.com/chikako-yamashiro/

Exhibition Information

◆ASIAN ART AWARD 2017 ファイナリスト展
※上映作品未公表
日時:9/23(土)〜10/29(日)※月曜休
会場:TERRADA ART COMPLEX 4F(東京)
料金:無料
問合:アート東京 TEL:03-5797-7912

◆山形国際ドキュメンタリー映画祭
※『創造の発端―アブダクション/子供―』『肉屋の女』上映
日時:10/5(木)〜12(木)
会場:フォーラム山形 他
問合:映画祭事務局 TEL:023-666-4480

◆山城知佳子写像作品の一部をギャラリーレネミアにて常設展示販売
日時:9/1(金)〜30(土)13:00〜18:00 ※日曜休
会場:RENEMIA(那覇市牧志)TEL:098-866-2501