箆柄暦『十月の沖縄』2016

pira1610_hyo250
箆柄暦『十月の沖縄』2016
2016年10月1日発行/162号

『サンシン・アイランド・カフェ』
よなは徹『Roots〜琉楽継承 其の二』
南方写真師・垂見健吾『琉球人の肖像』写真展&トークイベント
横浜市鶴見区「第1回 鶴見ウチナー祭」
ハシケン『うた』
BEGIN『苗』『網にも掛からん別れ話』
『しまうたの系譜 Vol.2普久原恒勇作品集』
『沖縄音楽撰集〜BEST OF OKINAWAN MUSIC〜』
りんけんバンド東京コンサート2016

 

 

《Piratsuka Special》
比嘉真優子『新北風〜ミーニシ〜』

唄に恋して、唄とともに生きていく。

 石垣島生まれの比嘉真優子は、物心ついた頃から唄が大好きな子供だった、という。民謡好きな漁師の父に連れられて、地元の民謡酒場に通い詰め、家でも父の唄を聴いて過ごす日々。小学校高学年から本格的に八重山民謡を習い始めると、めきめき頭角を現し、十五歳のときには史上最年少で八重山古典民謡コンクールの最優秀賞を受賞した。高校卒業後はプロを目指して那覇に移り住み、旧知の間柄だったベテラン唄者で音楽プロデューサーの知名定男に師事。彼が手がける女性ボーカルグループ、ネーネーズの拠点でもある「ライブハウス島唄」で活動を開始した。

 だが「それなりに唄えるはず」と思っていた彼女の唄は、プロの世界では容易に通用しなかった。「ネーネーズをはじめ、ステージに立つ方はみんなプロ意識が高くて、唄ももちろんすごく上手くて、カッコいい。それに比べれば私の唄は趣味程度だなと。私ももっとプロ意識を磨かなければ、と思いました」

 そこで彼女が望んだのが「ネーネーズになる」という道だった。自身を成長させるには、ネーネーズの一員となって経験を積むのが一番、と考えたのだ。その熱意は知名にも認められ、真優子はネーネーズに加入。最終的には五年間に及んだその活動を、彼女は「すごく勉強になりました」と、感謝の面持ちで振り返る。「ネーネーズはほぼ毎日ライブをするので、舞台度胸もついたし、多くのお客様と接することで人見知りも直りました(笑)。楽曲のレパートリーも多いから、唄の世界を表現する力も鍛えられたと思います」

 そうするうち「ソロでやりたいことが見えてきた」と感じた真優子は、一昨年の秋、ネーネーズを卒業。昨年春からソロで活動を始め、ついに先月、念願の初アルバム『新北風〜ミーニシ〜』を完成させた。本作には、長年唄い込んできた八重山民謡五曲と、ネーネーズの楽曲から選んだカバー三曲、そして新曲「ドキュメント」が収録されている。「ドキュメント」は知名が真優子の半生を題材に書き下ろしたもので、唄の魅力を教えてくれた最愛の父への思いと、故郷や島唄に寄せる気持ちをギュッと詰め込んだバラードだ。

 実は真優子の父は彼女が中三のときに亡くなったこともあり、島の記憶は必ずしも良い思い出ばかりではないという。「でも私には唄があったから、辛いことも乗り越えてこられたし、〝この辛い経験も必ず唄に活かせる〟と思えるようになった。私は本当に唄に救われてきたんです。だから私の唄も、辛い思いを抱えている方に寄り添って、その心を支えるような存在になれたら、と思います」

 「表現力を高めるには、経験を積んで人の痛みを知り、人柄を磨くことが大切だと思う」と語る真優子。だが本作を聴けば、彼女の唄にはすでにその〝力〟がしっかりと宿りつつあることに気づくだろう。正統派の八重山民謡からポップな島唄まで、唄の世界をきめ細やかに描き出す歌唱力と圧倒的な声量、声からにじみ出る情けの深さ、そして何より唄に向けるひたむきな情熱に、鳥肌が立つ。まずはアルバムで、そして次はライブで、この唄をぜひ多くの方に聴いてもらいたいと思う。
(取材&文・編集部/撮影・喜瀬守昭)

 

比嘉真優子(ひが・まゆこ)
1990年、石垣市新川生まれ。2009年から5年間、女性ボーカルグループ・ネーネーズのメンバーとして活動したのち、2015年春よりソロ活動を開始。現在はライブハウス島唄をはじめ、県内外でライブ活動を行っている。

Live Information
10/28(金)比嘉真優子 一人唄会 20:00 
2,000円(小中高生1,000円、幼児無料)
ライブハウス島唄(国際通り)098-863-6040

10/18(火)吉田康子・比嘉真優子 19:00 
2,000円(小中高生1,000円、幼児無料)
ライブハウス島唄(国際通り)098-863-6040

比嘉真優子 インストアライブ
10/22(土)14:00 無料
タワーレコード那覇リウボウ店 098-941-3331

比嘉真優子『新北風〜ミーニシ〜』
DIG RECORDS DCA-0010 
2,000円(税別) 9/10発売
月ぬ美しゃ/新北風/つぃんだら節〜久場山越路節/まんがにすざ節〜波照間ぬ島節/恋西陽/ドキュメント/与那国しょんかねー/ヨーンの道/黒島節