箆柄暦『十月の沖縄』2015

pira1510_hyo250箆柄暦『十月の沖縄』2015
2015年10月1日発行/150号

りんけんバンドコンサート
上原知子主宰の三線女子会
『琉神マブヤー5(イチチ)』放送開始
日韓伝統音楽祭50−50年目・50歳未満の50人
うないぐみ+坂本龍一「弥勒世果報−undercooled」
ネーネーズ『reborn』
しゃかり『Life』
イクマあきら『SPIRIT OF CARNIVAL』
『祝!リスペクト20年〜みなさまのおかげで〜』
西仲美咲『LEQUIO HISTORIA』
coco←musika『coco←musika III』
[速報]桜坂劇場年末ライブ週間出演者続々決定!

 

 

《Piratsuka Special》
下地 暁

宮古島の魂を唄に込めて。

 下地暁は、生まれ故郷の宮古島に根を張って生きるシンガーソングライターだ。自ら〝アイランダー・アーティスト〟と名乗り、自身でアレンジした宮古島の民謡や、島の方言を取り入れたオリジナル曲を歌う。加えて島の若手アーティストのプロデュース、島から生放送しているラジオ番組の制作、島の伝統芸能〝クイチャー〟をテーマにしたイベントの運営など、宮古島の文化を発信する活動にも先頭切って取り組んできた。そんな自分を称して、下地は「故郷バカですね」と笑う。

 実は彼は三十代に入る頃まで、故郷に特別なこだわりがあるわけではなかった。高校時代は洋楽に傾倒し、卒業後に上京。東京では音楽業界に飛び込み、ライブハウスの立ち上げや楽曲制作などに携わり、キャリアとセンスを磨いた。だが二三年前、彼は十五年間の東京生活を切り上げて宮古島に戻る決心をする。それは「故郷で若い世代に方言が継承されなくなっていること」に気づき、強烈な危機感を覚えたためだった。

 「当時、母が病気で倒れて島に帰省する機会が増えたんですが、親戚の子と話すと『方言は聞けるけどしゃべれない』という子が何人もいて。『このままでは母の命と同じように、故郷の方言も近いうちに消えてしまう』と感じたんです。だったら僕が島に帰って、自分の音楽に方言を取り入れて発表していけば、方言を次の世代につなげていけるかもしれない。それが自分を育ててくれた宮古島や両親への恩返しでもあると思いました」

 とはいえ、離島である宮古島を拠点とした活動は、経済的にも精神的にも「並大抵のことじゃない」。でも下地は「ローカルこそがパワー」と信じ、決して歩みを止めようとしない。「離島のハンデも多々ありますが、島独自の文化こそ世界に通じるアイデンティティであり、島を豊かにする力だと思うんです。いろいろなことが変わってゆく時代だからこそ、島が島であるために何ができるのか、一人ひとりが考えて、自分の足元を大切にすることが大事なのではないか、と」

 そんなメッセージを込めた最新アルバムが、この夏リリースした『宮古世』だ。制作にあたり、プロデューサーには二度のグラミー賞受賞経験もある世界的ミックスエンジニア、GOH HOTODAを迎えた。もともと二人は十年来の友人だったが、下地の楽曲のユニークさや生き方に惚れ込んだGOHが、前作『Myahk』に続いて録音とミックスを快諾。アレンジには以前から親交のある角松敏生ら、J‐POPシーンのトップクリエイターも多数参加した。

 収録曲は宮古島の民謡とオリジナル曲が半々だが、宮古方言で歌う下地のボーカルにはとりわけ豊かな倍音が含まれ、さながら祈りのようにも響いてくる。その独特の唄声がスタイリッシュなサウンドと絡み合うとき、伝統と最先端が絶妙のバランスで融合し、実に居心地よい世界に誘われるのだ。彼の島に対する思いが凝縮された、渾身の一作といえるだろう。下地は語る。
「島への思いが、僕の原動力。その情熱を捨てずに、これからも足元を大切に活動していきたい」

 リリース記念ライブは10月に東京、11月に那覇と宮古島で開催される。宮古島の魂が宿る唄声を、ぜひお聞き逃しなく。
(取材&文・高橋久未子/撮影・親泊宗秀)

下地暁(しもじ・さとる) 1957年、宮古島生まれ。高校卒業後上京し、音楽業界で活動。1992年に宮古島に拠点を移し、1stアルバム『オトーリ』を発表。2002年に伝統芸能イベント「クイチャーフェスティバル」を立ち上げ、運営に携わる。2010年より宮古島大使。

◆下地暁
『宮古世(ミャークユー)〜唄霊〜』

ラグーンミュージックエンターテイメント TEL:0980-73-9236
SRMK-0028 2,500円(税込) 2015/8/8発売
ウヤキあぁぐ/忘きなよ/東里真中/命の花/プカラサ/宮古世〜ミャークユー〜/なますぬぐう/東里真中〜三線Ver〜/酒田川/実世ぬクイチャー/伊良部とうがに/命の花(Reprise)

◆下地暁『宮古世』発売記念ライブ
10/23(金)開場17:30/開演19:30 東京・渋谷JZ Brat
11/06(金)開場19:30/開演20:00 那覇・時空
11/08(日)開場19:30/開演20:00 宮古島・ズビズバー