箆柄暦『七月の沖縄』2015

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箆柄暦『七月の沖縄』2015
2015年7月1日発行/147号

海洋博公園花火大会バスツアー
イチャリバーズ『千里の海を越えて』
伊是名島出身の島幸子芸歴40周年記念公演
具志堅ファミリー「マジムンの唄」
Shaolong To The Sky『THE SUN AND THE RAINBOW』
宮城善光『宮城善光ナーグシクヨシミツ1965〜2015』
『SUKIYAKI OKINAWA(スキ・オキ)2015』
「8.8 ROCK DAY」紫、ISLAND、HEARTBEATS
仲宗根創デビュー15周年記念コンサート
BEGIN『ビギンのマルシャ ショーラ』
Glean Piece『Miracle Positive Pieces』

 

 

《Piratsuka Special》
大島保克『越路-kuitsui-』
八重山民謡ならではの名曲を集めた〝二揚集〟

 大島保克は、石垣島の白保地区で「ひばり」と呼ばれる唄上手の家に生まれた。父方の祖父は地元でも評判の唄の名手、母方の祖父は八重山古典民謡の師範。周囲にいつも〝唄〟があった彼は、しかし、幼少から民謡を習っていたわけではなく、むしろギターが好きな少年だった、という。

 本格的に唄三線を始めたのは、八重山高校で白保の先輩唄者・新良幸人に誘われ、郷土芸能クラブに入部してから。「最初は声も出なかった」そうだが、民謡自体はふだんから耳にしていたため上達は早く、しだいに活動に熱中、卒業後も折に触れて歌い続けた。「自分の中の〝ひばりの血〟が騒いだのかもしれない」と、保克は笑う。

 その後就職のため上京した保克は、島の同級生・BEGINのライブで民謡を披露して注目され、一九九三年にオリジナル曲「イラヨイ月夜浜」を含むアルバム『北風南風』を発表、プロの唄者として歩み始める。だがそこで彼は一つの壁にぶつかった。「自分は民謡をきちんと学んでいない」と痛感したのだ。

 「僕は師匠もいないし、自分で学ばなきゃと思って、二十代後半から三十代にかけて、古い民謡を本当に勉強しました。同時に僕が好きな先輩方、たとえば登川誠仁さんや知名定男さんのところに行って、音楽に対する姿勢や考え方を教えてもらったりもしました」。そうした努力を重ねつつ、活動を続けて二十数年。四十代半ばの今になって「ようやく見えてきたものがある」と、保克は振り返る。
 「以前は曲によって得意・不得意があったり、声も張り上げるように力を込めて歌ったりしてたけど、最近はどの曲でも自分なりに唄が掴めてきたというか、いつでも同じテンションで歌えるようになりました。このまま年を重ねれば、唄はまた変化してくるでしょう。でもその前に、今の〝四十代の唄〟をちゃんと記録しておきたいと思ったんです」

 そうしてできたアルバムが、『越路 Kuitsui〜八重山二揚集〜』だ。八重山民謡の中でも〝二揚げ〟と呼ばれる調弦の曲だけを集めたもので、「とぅばらーま」「安里屋」「与那国しょんかね」などの名曲も多数収録されている。保克は言う。「二揚げは八重山民謡に特に多い調弦で、叙情的な旋律の美しさが一番よく出ている。八重山の人にしか出せない味もあるかもしれませんね」

 今回はゲストに唄三線・鳩間可奈子、太鼓・仲宗根〝サンデー〟哲という八重山の後輩二人を迎え、沖縄で録音。シンプルな音構成をバックに、保克の唄声は朗々としなやかに響きわたり、安定感の中にもダイナミックな臨場感をたたえ、まさに〝八重山の唄者ならでは〟の唄三線が堪能できる。その直球勝負の姿勢には、〝伝統の継承〟に心を砕く保克の強い思いも込められているようだ。

 「沖縄の音楽がどんどんポップに変わっていく中、先輩方から受け継いだ民謡を次の世代に伝えることが、僕ら世代の唄者の役目だと思っています。新しくオリジナル曲を作るにも、自分の中に古い民謡という〝芯〟がなければできない。今回の作品は、それを確かめるための記録でもあります。これを一区切りに、また次に進んでいきたいですね」
(取材&文・高橋久未子/撮影・喜瀬守昭)

 

 

大島保克(おおしま・やすかつ)
1969年、石垣島白保生まれ。1993年に1stアルバム『北風南風』でデビュー。現在は東京を拠点に、八重山民謡とオリジナル曲を歌うライブを国内外で行っている。

Live Information
7/3(金)東京・風知空知
7/9(木)埼玉・汁や
7/18(土)三重・Jikonka SEKI
7/20(月祝)京都・拾得

◆大島保克
『越路 Kuitsui〜八重山二揚集〜』

ビクターエンタテインメント VICL-64383 3,024円(税込)2015/7/22発売
古見ぬ浦/安里屋/小浜節/仲筋ぬヌベーマ/大浦越路/黒島節/崎山節/与那国しょんかね/月ぬ真昼間/とぅばらーま/弥勒節〜やらよう/与那岡